歯科乱立の時代

歯科医院の数は一般の方が想像している以上に存在しています。最近の統計ではコンビニエンスストア以上の数が存在し、その競争が激化しているのは想像に難くありません。開業すれば儲かるという時代は終わり、立地や販促、そして収益性での勝負になっているのではないでしょうか。設備がきれいなうちは新しさ目当ての患者がくるものの、長期的にじわじわと新規患者が減っていってしまうという歯科医院も多いと思います。こうした状況打破のためにマーケティングも重要ですが、業務効率化も重要です。

収益性の鍵を握るのは業務効率性です。予約管理や受付業務など、できる限り少人数で運営できる体制を築くことができれば、まだまだチャンスはあるように思います。こうしたシステムは新規開院したところの方が導入されている傾向が強いため、既存院であればなおさら重要性が高まります。

今回のテーマは、歯科医院の業務管理システムについてです。どういったポイントに気を付けてシステムを構築すれば、歯科医院経営に役立つものになるのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 クラウド化で煩雑さから解放

こういった管理システムを構築する場合、医院内にサーバーを設置し、そのサーバー上でシステムを稼働させ、医院内の同一ネットワークのパソコンからアクセスをする形態をとることが多いように思います。これは外部ネットワークからのアクセスを正しく遮断できるのであればセキュリティという面では安心な構成ではあります。

ただ、サーバー自体の導入費用が高く、また常時稼働させている電気代と故障による業務停止といったリスクを抱えてしまいます。システムが故障してしまったら、それを直すのに数日待って、その間は非常に非効率な人力対応で乗り切らないといけないということが起こってしまいます。こういった事態を避けるためにもクラウド上にシステムを構築してしまうのをお勧めしています。

もちろんセキュリティは厳重にする必要があります。アクセスできるIPアドレスを限定することで不特定多数からのアクセスからシステムを守ることができます。その他サーバーのセットアップでも徹底的に絞り込む設定を行うことで個人情報を扱うに問題のないレベルにまでセキュリティを高めることができます。

クラウド上に構築することでインターネットブラウザさえあればどのようなパソコンでも使えるようになり、パソコンを買い換えたら動かなくなったという事態を防ぐことができます。また、システムの改修や機能追加なども遠隔で行いやすくなるので、通常業務を止めることなく永くシステムを使っていくことができます。面倒なサーバーの設置や無駄な電気代もかかりません。さらには、万が一歯科医院を複数開業した際にも、同じ仕組みがそのまま使えるというメリットもあります。

数年前まではこうしたクラウド上で利用できるサーバーの性能が低く、料金も高かったため現実的な選択肢ではありませんでした。今は十分な性能をもったサーバーが月額費用だけで安く利用できるため、コストの変動費化や余計な固定資産を抱え込まないという会計的な面でもお勧めしています。

Point.2 患者IDでシームレスに管理

歯科医院に来院された患者さんには何かしらのカードを発行しているところが多いと思います。このカードに記載されている患者IDに患者さんの全ての情報を紐づけていきましょう。

患者IDを基に受付から施術内容まで管理できるようにします。また、住所や連絡先の情報も統合し、定期健診の案内などのDMも簡単に送信できるようにしましょう。患者さんごとに蓄積されたデータは個別でも集計データでもすぐに確認できるようにし、歯科医院経営の上で役立つレポート機能を実装します。リピート率や世代分析、住所の分布など、サービス向上や販売促進施策の検討に役立つデータをしっかりとおさえましょう。もちろん、IDは容易に推測可能なので、他の患者さんのデータを除き見られないようにしっかりとしたセキュリティ対策が必要なのは言うまでもありません。

治療からマーケティングまで、一貫した管理ができるため、情報の散在を防ぎ、スタッフにとってもわかりやすく管理しやすい状態を実現することができます。

Point.3 インターネットからの予約も対応

予約を受け付けていない歯科医院も多いとは思いますが、矯正やインプラントなども並行して行っている歯科医院であれば、予約を受け付けていることと思います。インターネット上から予約が行えるようにし、患者さんの利便性を高めましょう。

予約内容は管理システム上に保存されるため、受付から患者管理までスムーズに行うことができます。スマートフォン対応など細かい部分も突き詰めることで、より使ってもらえるシステムができあがります。さらに当日については、混雑状況も表示できるようにすると良いでしょう。およその予約数や、過去の傾向などを見ると、おおよその混雑度予想がだせますし、受付状況を反映すればリアルタイムの混雑度を表示できます。

時間枠や、受け入れ人数などをあらかじめ設定しておけば、予約が多すぎて待ち時間が伸びるといった事態も防止できます。一般診療枠が混む曜日などは自由診療の受付枠が自動的に減るようにするなども良いかもしれません。

淘汰の時代に生き残れるツールへ

人口減の時代に供給過多気味の市場。悲観的なデータばかりが目に付きますが、一方で盛況な歯科医院がたくさんあるのも事実です。口コミの影響もあり、流行るところはどんどん流行るという構図ができあがりつつあるのではないでしょうか。

業務効率を高め、その分の時間やコストをサービスの向上につなげていくことこそ王道にしてベストなアプローチだと思います。無料のソフトや安く利用できる汎用的なシステムではなく、自分達の使い勝手を追求できるシステムの構築も是非検討してみてください。

開発スタッフのコメント
歯科医院向けのパッケージソフトやシステムは多数あるため、そういったシステムを使われているところも多いと思います。そういったところは予約と内部システムが断絶していることも多く、スタッフによる入力を前提にしているところばかりではないでしょうか。患者数が少ないうちはスタッフの力でカバーするのも有効ですが、そもそもの仕組みをうまく統合することができれば、早く、正確で、省力的、という理想の状態が実現できると思います。