荷室の空きは機会損失

今この瞬間も、たくさんの配送トラックが走っています。世界でも高精度な日本の物流を支えているこうしたトラックの荷室が常に一杯とは限りません。むしろ空に近い状態で走っている車のほうが多いかもしれません。空いた状態で走ることは何も売上を生み出さないためトラックの稼働率を著しく下げてしまいます。

行きも帰りも荷物を積んで運ぶということは想像以上に大変なことです。一企業専属のトラックの場合、荷物量から行程から全て管理できるので稼働率を高めることは可能ですが、委託を受けての荷物の場合、行きは一杯でも帰りは空で、ということが頻繁に起こりえます。稼働率というビジネス上の視点からも、最近であればエコの観点からもよくないのは言うまでもありません。

そうした荷室の無駄を解消するためのサービスが配送トラックのマッチングサービスです。荷物を運びたい人と、荷物を運んで欲しい人をマッチングすることで、トラックドライバーには稼働率向上を、配送を依頼する人にはお値打ちな配送料金を提供するサービスです。

今回のテーマはこの配送トラックのマッチングサイトをどのように構築すべきかについてです。機能をどのように設計しシステムとして構築すべきか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 荷物依頼に対して運べる人がオープンオークション

マッチングサイトである以上、マッチングの基本原理は市場原理に任せるべきです。ある荷物に対して最も安い値段を入札した人が仕事を獲得するというのを基本にします。ただ、それでは安かろう悪かろうの業者が案件を確保してしまうことにもつながるので、お互いの評価システムを設け、悪質な業者が市場から追放されるセーフティネットを構築しておきます。

荷物を依頼する側には入札に参加するための条件を設定することができるようにし、実績の有無や評価の高低であらかじめ入札業者を絞ることができるようにします。また、入札のあった業者から任意で選択できる機能も設け、価格と評判、掲載されている情報等を総合的に判断して依頼できるようにもします。

荷物の総量が一台でまかないきれないような場合には、入札があったものから適宜マッチングをしていくという調整も必要でしょう。トラックのサイズにあわせて分割することも考慮し、入札単位を柔軟に構成できるようにするべきです。人力による割り振りでは複雑すぎるものを、システムの力で短時間で精度高く割り振ることができればそれだけでも利用者にとっては大きな魅力になり得ます。

Point.2 配送業者側は条件通知で簡単入札

配送業者も四六時中そのサイトをチェックしているわけにはいきません。トラックを運転している時間もありますし、休息をとっている時間もあるでしょう。そういった場合にも意中の案件を見逃さずに済むように、条件指定による通知機能を実装します。

予め荷物の出発地エリアと到着地エリアを設定しておけば、条件に該当する荷物が発生した際にメール等で通知がくるようになります。その通知に記載のリンクをクリックして入札に必要な情報を入力するだけで荷物の入札に参加できるようにします。サイトはスマートフォンに最適化し、どんな場所にいても簡単に入札に参加できるようにしておきましょう。

さらには音声の読み上げにも対応すると良いでしょう。運転中には手は空いていなくても耳は空いています。音声での入札指示まではいかないにしても、どういった案件があるかだけでも把握できるのは便利です。音声認識の技術も年々向上しているため、音声で聞いて音声で指示するという芸当も不可能ではなくなってきました。利用者側からのニーズにあわせて、こうした応用機能の実装も検討してみてください。

Point.3 GPSを活かして荷物を自動追跡

荷物を依頼した側からすると無事に荷物が配送されたかは気がかりなものです。とはいえ配送業者に逐一報告を促すことも反発を招いてしまいます。そこでスマートフォンのGPS機能を活用し、自動もしくは1クリックで荷物の現在地や配送状況を報告できる機能を実装します。

荷物の依頼側はマイページ上で荷物の現在地を知ることができ、遅れがないか、トラブルがないかを常に確認することができます。加えて、GPS自動追跡を使用してくれるかどうかを配送業者紹介ページに記載することで業者選びの基準にもできるようにしておきます。現在地がわかれば、予定時間より早いけど受け取りたい、といったことにも対応しやすくなります。

空きを減らし、日本全体の効率UPを

空き荷室が増えることで喜ぶ人はいません。配送業者も荷物の依頼人も、そして地球環境も嬉しいこうしたマッチングサービスは信頼性と動作の軽快さが重要になってきます。また、全国展開と想定される負荷を事前に設計に折り込み、利用されるであろう端末への最適化にも柔軟に対応し続けていく姿勢が重要です。

開発スタッフのコメント
運転者の利便性を極限まで追求するのであれば、音声による操作に対応するのも一つです。運転中は手を使えないことが多いと思うので、声で概要を聞き、声で何かしらのアクションを行うことができれば、「次のサービスエリアに停まってから・・・」といったタイムラグを防ぐことができます。また、10分前に知っておけば、といった機会損失を防ぐこともできますので、利用者シーンに沿った機能を追究してみてください。