じわじわと拡大する電子書籍

電子書籍元年という言葉が話題になったのが遠い昔のように感じますが、じわじわと、ちょっとずつではあれ、確実にその認知と利用率は高まってきています。amazonに代表される大手の電子書籍販売サイトが大きなシェアを持つ一方で、ジャンルを絞ったニッチや、オリジナリティで勝負しているところも健闘しています。単純なPDFを販売するものから、著作権保護機能がついた独自フォーマットのファイルを販売するものまで様々です。競争も激化しているようで、有名な電子書籍販売サイトがサービス終了する、というニュースを耳にすることも珍しくなくなってきました。

自社でコンテンツを持っている、またはコンテンツを持っている人とのネットワークがある会社であれば、電子書籍のダウンロード販売サイトの構築を検討したことがあるのではないでしょうか。自前で構築することにより自由度は確保されますし、余計な手数料をプラットフォーム提供者に支払う必要もありません。

今回のテーマは、こうした電子書籍ダウンロード販売サイトのシステムについてです。実際の商品を動かす商売とは違うからこそのメリットをどう活かし、デメリットをどう対策するべきか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 PDFアップロードで簡単商品登録

電子書籍の元となるデータはPDFでの管理が多いのではないでしょうか。そのままPDFとして販売する方法も一つですが、何かしらの著作権保護技術を施して販売することも多いと思います。

ローカル環境で著作権保護を施したり、特定のフォーマットに変換するのも一つですが、その作業をサーバー側に任せるというのも可能です。担当者は該当のPDFをアップロードするだけで商品登録が行えるので、管理すべきファイルもPDFだけになり、混在を未然に防ぐことができます。実は販売していたデータがそのままのPDFだったというミスも防ぐことができるため、自動化という意味では非常に効果的です。

また、サーバー上で変換するプログラムを改修することで、多様なフォーマットに随時対応していくことができますし、既にアップ済みの商品に新しいフォーマットを追加する処理を一括で行うといったことも可能になります。サーバーに任せられることは積極的に任せ、ミスと担当者の労働時間が減るように工夫しましょう。

Point.2 各端末への最適化サービスも提供

電子書籍と一口にいっても、ユーザーが読む端末は千差万別です。iPadのような大きめのタブレット端末で読む人もいれば、パソコンの画面、さらにはスマートフォンの小さい画面で読む人もいるでしょう。シェアだけでいえばKindleなどの専用端末の存在も無視できません。

それぞれに環境や画面サイズが違うため、ダウンロードの際に端末にあわせて最適化をした上でダウンロードができるような機能を実装します。パソコン用、タブレット用、そしてスマートフォン用と3つのパターンがあれば当面は問題ないと思います。すべての端末で共通化できればよいのですが、なかなか解像度も含めると環境ごとの差異が大きいため、なかなかもどかしいのも事実です。

もちろん1つしかサイズがなくても、どの端末も読むには読めるのですが、最適化を施すことでより読みやすくなります。小さな機能のように思えますが、こうした地味に役立つ機能が長い目で見るとボディブローのようにきいてくるのではないでしょうか。

基本機能+アルファが重要

電子書籍ダウンロード販売である以上、ダウンロードの快適性やサイトの使いやすさ、商品の充実度などが重要なのは言うまでもありません。さらに不正ダウンロードを防ぐ仕組みや、大規模なアタック対策なども必須になってきます。こうした機能はあえてポイントではあげませんでしたが、当たり前のことを当たり前に実現できるシステム企画・開発力が必要です。

基本がしっかりできた上で、どんなオリジナル機能を作り上げていけるかがビジネス上の重要課題になります。無駄な機能ではなく、ユーザーが喜ぶもの、スタッフが喜ぶもの、この二方面で追求する先に素晴らしいシステム像があるのだと思います。しっかりとした取り組み、応援しています。

開発スタッフのコメント
電子書籍販売サイトがサービス停止したために本のデータが読めなくなる、という事態が起こりえます。消費者視点でいけばありえない話ですが、事業者もビジネスのため仕方ない面はあります。完全に独自規格でかためるとこうした事態の際に消費者救済ができないため、暗号化等をほどこす場合は業界標準規格や外部と互換性のある規格を採用すべきでしょう。自社はそれ以外の部分に注力することでリソースの分散を防ぐことができます。