毎日のちょっとしたことの積み重ねが・・・

法律に則って営業活動を行っている企業であれば、タイムカードやエクセル等の手段で社員の勤怠管理を行っていると思います。出勤時間を打刻し、退勤時間を打刻する。毎日の繰り返しですがそれを取りまとめて勤務表に仕上げる作業までを含めると、膨大な社員の時間が毎日使われていることになります。

これだけ多くの時間を費やしている単純作業であれば効率化しないわけにはいきません。毎日の1分でも、1年単位やさらに長い単位で社員人数分の損失だと考えるとそのコスト削減効果は大きいものになるでしょう。最近はタイムレコーダー系のWEBサービスも多く登場しており、出退勤の記録自体に選択肢は多くなってきました。とはいえ、自社の要件にフィットさせようとするとカスタマイズ費用がかさんだり、そもそも対応しきれないので人事スタッフによる手作業での調整が必要だったりということもよくある話です。

今回のテーマは出退勤を記録する勤怠管理のシステム構築です。少しでも早く正確に記録していける仕組みを作り上げることで業務効率UPを目指します。とはいえ、システム化するために大きなコストがかかってしまっては本末転倒なので、いかに開発コストを抑えるかも頭にいれながらポイントを整理してみましょう。

Point.1 専用のPCを設置し、入力打刻

タイムカードの機械は地味に高いです。また、タイムカード自体を保管しておく場所を含め設置スペースをとります。また、拠点が複数になる場合に管理やとりまとめが複雑になるというデメリットもあります。機械は必ず故障したり、調子が悪くなったりするもののため、その対応、サポートコストも見込んでおかなければなりません。

まずは簡単な出退勤時間を蓄積するシステムを開発し、タイムカードの機械をノートパソコンもしくはiPadのようなタブレットで置き換えます。社員は自分の社員番号を入力するか、便利にするのであれば社員証やFelica対応のICカードなどをかざすことで出勤時間の打刻と退勤時間の打刻を行います。できる限り簡単に登録できるようにすることが、利用率を高めたり、導入の際の反対の声を抑えたりするのに最善です。在宅勤務の場合にも打刻できるようにするなどの配慮をするなどすれば、多様化すればワークスタイルにも対応しやすくなります。

簡単とはいえシステムなので、労務管理の担当者の集計業務は必要ありません。その会社の労働規則に基づき、月間の労働時間や残業時間、その他管理上必要なデータを整理し表示・印刷できるようにします。

Point.2 打刻時にカメラ撮影をし、不正防止

出退勤管理で気にするべきことの一つが不正打刻です。本人以外の人が代わりに打刻することで時間のごまかしができてしまいます。状況によってはこうした柔軟さが便利なことはありますが、社員の不正管理を厳しく取り締まるポリシーなのであればそのための仕組みをシステムに実装します。

具体的にはノートパソコンやタブレット端末に搭載されているフロントカメラを活用し、打刻時に写真撮影を行います。こうすることで打刻対象者と写真の人物が違えば不正ということがひと目でわかりますし、何より社員に対する抑止効果が高まります。

さらに高機能にすれば写真撮影によって本人認証のようなことも可能ですし、その日の顔色や雰囲気から、社員の体調管理ができているかを判定するといったことも可能で夢はどんどん拡がりますが、そんな高機能を実装してしまうと開発コストが跳ね上がるのでお勧めしません。抑止力を中心にすえるほうが低コストで高い効果が見込めると思います。将来的に機能拡張は行っていけるので、独自性を追求する場合には夢溢れる構想を立てることも良いでしょう。

Point.3 勤務状況はレポート化し、経営陣に送信

社員の勤務状況は会社の現状をよく表します。会社の生産性の高い低いを判定し改善を加えていくための基礎資料として、出退勤情報を基にした経営資料はとても役に立ちます。とはいえ、そのために担当者が夜なべしてエクセルファイルを作るのでは意味がありません。毎日蓄積されるデータを基に、専用のレポート画面かメールに添付するかたちで社員の労働状況レポートを経営陣に送信します。

どういった項目を監視するかは会社の方針次第ですが、残業ゼロを目指している会社は残業時間に目をつけるべきでしょうし、チーム毎に業務量を調整したい会社はチーム毎の労働時間比較を行うべきでしょう。このように数字を見える化することで可能になる議論がいくらでもあります。

各種の法律に準拠するためにも、残業が異様に多い部署の管理担当者には自動で通知がいくようにするなど、人事部門の手間をかけずに組織の就労状況を健全に保つための工夫を組み込むこともできます。あまりに細かくやりすぎると指導通知がうっとおしいという反発の声につながってしまいますので、送信の仕方、送信頻度については、適切なものを組織にあわせて検討することをおすすめします。督促も送りっぱなしではなく、どういった取り組みができるかのサポートや面談等のケアも含めて取り組むことをお勧めします。

社員が気持ち良く働ける環境作りを

同じ8時間働くのでも、楽しく働くのと辛く思いながら働くのでは生産性もストレスレベルも大きく違ってきます。出退勤のデータを正確にとり経営改善に役立てるのは、決して社員を監視するためではなく、社員が気持ち良く働ける環境作りのためという根本を常に忘れてはいけないように思います。

残業時間や離職率など、見える化されることで知りたくもない辛い実態が見えてくることもあると思います。それでも見える化することには大きな意味があります。このケーススタディが、少しでも勤怠管理の手間を減らし、労働環境を改善するための議論のきっかけになれば幸いです。

開発スタッフのコメント
単純なタイムレコーダーとして割り切るのも一つですが、休暇の申請や残務の申請など、そこに承認機能を絡めると立派な勤務管理システムに進化します。既に何かしらの労務管理システムを使用しているのであればそこまでは不要ですが、足りない部分を必要なだけ組み合わせられるのはオリジナルシステムの利点です。もしかしたらこれも、というものも一度、ゼロベースで検討対象にしてみてください。