居住者満足度向上と管理費低減の要

タワーマンションや大規模なマンション開発が一般的になり、インターネットも当たり前のように普及した今、マンション内で居住者専用のポータルサイトを構築する動きが増えてきました。入居時のプロモーションにメリットとして訴求されることも多くなってきており、少しずつですが、確実に「そういうのがある」という認知が拡がってきているようです。

ただ、そのポータルサイトの構成は様々です。回覧板が電子化しただけのものから、施設予約やカーシェアリングの予約ができる本格的なものまで多種多彩な居住者向けのシステムが日々開発され、提供されています。また、大手グループ会社であれば、グループ全体で同じシステムを使っているというケースもあります。

ここではマンション住人の満足度を高めることはもちろん、管理業務を自動化することで管理費低減にもつながるシステム開発がどのようにすれば実現できるか、いくつかのポイントにわけて考えてみたいと思います。

Point.1 機能をモジュール化し、将来の拡張に備える

マンション管理は、完成時からどんどんと衰退していくのではなく、住人達の変わりゆくニーズを反映して進化していくべきものだと思います。当然、ポータルサイトもシステムもその時々の機能にあわせて進化・拡張できるようにすべきです。最初の頃の入居者属性と、10年後の入居者属性が同じとは限りません。むしろ人が入れ替わり、街が変化していく中で、属性やそこでうまれるコミュニティも変遷していくと考えるのが自然でしょう。

将来的な拡張を前提にしていない設計の場合、何かちょっとした機能を追加したい場合でも工数がかかりコストが跳ね上がります。そうなっては管理組合としても機能追加を行う判断に窮してしまうことが容易に想像できます。時代にあわせて刷新されないポータルサイトはやがて使われなくなり、悪循環に陥ってしまいます。放置されてしまうとコストの垂れ流しですし、古くなった仕組みはセキュリティリスクもはらんでしまいます。そうならないようにするべきなのは言うまでもありません。

機能をモジュール単位で追加できるように設計しておくことで、カーシェアの機能を追加したいだとか、イベント管理の機能を追加したいといった後々の要望にもコストを抑えながら対応可能ですし、後々の追加が容易なだけに、最初の構築時に使うか使わないかわからない機能を盛り込まざるを得ないことも避けられます。必要なときに必要な機能追加が行えると、いつまでも便利に使えるポータルサイトの実現に一歩も数歩も近づくと言えます。

Point.2 住人同士が知恵と情報を持ちよえる自律解決型へ

回覧板や入居の手引きといった情報をポータルサイトに掲載することは重要ですが、それに加えて住人同士が相互に質問し教え合うQ&Aサイトも長期的な居住満足度の向上に寄与します。また、周辺のおいしいお店情報やイベント情報など、マンション内のとっておき情報を共有し評価する仕組みを整えることで、マンション周辺地域の魅力再発見や住人同士の相互交流を促進することができます。

一方で住民間のトラブルは是が非でも避けたいことですので、炎上しかねない機能には慎重に取り組むべきです。レビューやコメント機能をつけないか、つけたとしてもポジティブな反応しかできないようにするなど、コミュニティをどう育てたいかにあわせて機能定義をすべきでしょう。また、利用者が継続的に発生するような運用上の工夫ももちろん必要です。作っただけでは目的の半分しか達成されていないため、作ったものがしっかりと使われていく努力は行うべきです。

このように、管理側の積極的な関与を必要としない自律解決型のポータルサイトを設計し、ちょっとした仕掛けを施すことで、管理コストを抑えながら充実した情報を持ったポータルサイトに進化させていくことができます。

Point.3 多彩な端末対応。主流はスマホ・携帯デバイス

いつでもどこでもインターネットにつながる時代になり、住人用ポータルサイトにアクセスする端末もスマホのような携帯デバイスが主流になってきています。ポータルサイトもそれを前提に設計し、スマホでも「一応」見られるサイトではなく、スマホで「快適に」使えるサイトにすることで、利用者がストレス無く利用できるようにします。

また、住民であることの認証についても一工夫が必要です。引っ越し等で人の出入りが激しいだけに、新しい利用者、もう使わない利用者を簡単に管理できるようにしておく必要があります。情報管理上も、人の出入りに確実に追随しておくべきです。新しい入居者がいつまでも使えないのも問題ですし、引っ越した元入居者がいつまでも使えるのも問題です。入居者管理の実状にあわせて、最適な運用フローを構築しましょう。

Point.4 認証やセキュリティにはしっかり配慮

普段の生活空間を共有しているだけに、情報漏洩やなりすましによる嫌がらせなど、相互交流の悪い側面が顕在化しやすいのがマンション住人用ポータルサイトの宿命です。セキュリティを出来る限り高めるのであれば、ユーザー名とパスワードによる認証に加え、携帯電話番号を登録してもらい、自動通話による追加認証を構築することも可能です。ショートメッセージでの二段階認証を追加したりと、認証まわりにはいくつものアイデアがあります。

その他にも、不審な利用パターンを自動で検知して管理者に通知するチェック機能などを追加することで、認証とチェックという二重でのセキュリティ担保が可能です。逆に、まったく利用していない人を抽出して、利用を促す活動を行ったりするのも良いでしょう。

マンションの付加価値にするというビジョンを

コンシェルジュサービスやゲストルーム、さらには独自のカフェまで、サービス充実競争が一段落し、増大した管理コストを見直す動きが一部では出始めています。集客のためだけに居住者ニーズを無視して作られたこうしたサービスよりも、今後住人用ポータルサイトの果たす役割が大きくなっていくのではないかと感じます。

理想的には、入居していない人にもデモ画面を通じて体感してもらえるようにし、マンションの資産価値を高めるものとしてポータルサイトが認知されるようになれば最高です。簡単なことではないですが、高いビジョンを持って企画・構築を行い、しっかりとした運用を行っていけば決して不可能なことではないと思います。

開発スタッフのコメント
住人への連絡手段の最適解は時代によって変化するため、システムとして柔軟に拡張できる余地を残しておかなければ年月と共に使われないシステムになってしまいます。LINEとの連携はすぐに思いつきますし、今後でてくるであろう新しいコミュニケーション手段との連携も視野にいれておくのも良いかもしれません。若い世代を中心にスマートフォンリテラシーは高まる一方なので、スマートフォンありきの設計にするのも考えられます。